身元保証の隠れた需要 実は困っている人がたくさんいる!?

こんにちは、行政書士の寺田裕希です。今回は前回簡単にご説明した身元保証について、「なぜ身元保証が必要なのか?」に焦点を置いてご説明したいと思います。

前回の記事はこちらからご確認ください。

病院の入院 福祉施設 身元保証

身元保証とは?

詳しくは前回の投稿を見ていただければと思うのですが

入院や福祉施設への入所の際にキーパーソンを求められることがほとんどです。このキーパーソンが身元引受人や身元保証人のことを指します。

例えば病院であれば

  • 緊急連絡先
  • 診察の承諾
  • 手術承諾の署名
  • ご遺体、遺品の引取

など・・・

こういった場合に備えて、身元保証人を求めてきます。

身元保証人は絶対必要!?

総務省が身元保証について調査をしており、令和4年3月29日に発表がされている内容※によりますと

なんと病院・施設の9割以上(東京都、神奈川県、埼玉県の約2000か所調査)が、入院・入所の希望者に身元保証人を求めているという結果となりました。

身元保証人がいない場合は

  • 「個別対応する」が約60%
  • 「入院、入居を断る」が約15%
  • 身元保証人の代わりに、「成年後見制度」や「身元保証会社」の利用を求める 約16%
  • 「入院・入所させる」が約4%

この調査では「個別対応する」の内容が細かく書かれていないため、

  • 個別対応した結果断らざるをえないのか?
  • 誰かしら身元保証人をつけるよう促すのか?

は分かりません。

「個別対応する」とのことなので身元保証人は絶対必要!っていうことではありません。

ただし圧倒的に「入院、入所させる」が少ないところを見ると、身元保証人がいない場合は入院、入所するにあたって病院や福祉施設側も少なからず抵抗があるように思えます。

また平成29年の厚生労働省の身元保証に関するアンケート

  • 「身元保証人がいなくても受け入れる」と答えた病院が7割~8割を超えるという良い結果
  • でもヒアリングをしてみると実際は身元保証人等がいないまま入院したケースがほとんどない

という状況のようです。

病院や福祉施設側も困っている!その理由は?

簡単に言えば病院も福祉施設も困っているのです。

国からも、「身元保証人がいないことを理由に入院等を拒まないように」というお達しが出ていますが、病院や福祉施設の実状とは少し離れているようです。

以下のような理由が挙げられます。

緊急連絡先に関すること

  • 意思疎通がとれず、連絡先の情報がとれない。
  • 急変時に備えて行政機関に相談したいが、断られる

入院計画書、ケアプラン等に関すること

  • 本人の同意がとれない、計画書が本人の希望に添っているか、どんな治療を望むのか判断できない

入院・入所中に必要な物品の準備に関すること

  • 病院の備品等を無償で提供、日用品等の準備が大変
  • 購入費用が回収できない

入院費、入所費に関すること

  • 未収金が回収できない。
  • 意思疎通がとれず、預金等があっても支払困難・・・

退院・退所支援に関すること

  • 退院後の受入先が決まらず、入院が長期化する。
  • 市区町村の協力が得られにくい

死亡時の遺体・遺品の引取り等に関すること

  • 死亡時の対応に苦慮
  • 事前に行政機関と打合せできないことがある

医療行為の同意に関すること

  • 本人の意思確認が困難な場合、判断に迷う。
  • 意思確認をするタイミングが上手く作れない・・・

上記の理由から、病院や福祉施設側も身元保証人のいない入院患者さんや入所希望者さんを入れたくても入れづらいという状況がございます。

特に「入院、入所を断る」と答えた病院では以下の理由が上がっていました。

負担が大きい(病院)
・ 緊急入院はやむを得ないが、その後の対応(身元保証人探し等)に労
力と時間がかかる。
入院費が滞る事例が少なくない。
(施設)
・ 支援しなければならないことが多岐にわたり、対応できない。
・ 職員のマンパワーが不足している。
・ 負担が増えるため現場職員のイメージが悪い。
何かあったときに誰も何もしてくれない人を、簡単には預かれない
責任が重い

(施設)
・ 生命に関わる連絡もあり、24 時間リスクを伴う
治療判断などが困る

・何かあった場合に訴訟に発展したらどうするか、解決できない。
・ 入所後のトラブルを避けたい。
・ 治療方針の意思確認や決定、遺体や遺品の引取りなど、行政でも対応できないものは施設でも対応できない
・ 行政との協力体制が構築されていない方は入所不可としている。
・ 介護サービス事業者に全責任を負わせるのは疑問である。

退所や入院支援などが困難(施設)
・ 次の受入先を探すのが困難になる。
・ 入院や手術が必要な際に病院から身元保証や医療同意を求められる
施設としては入院手続や医療同意ができない
その他(対応方法が不明 など)(施設)
・ 急変時や死亡時の対応が分からないので、指針がほしい。
・ 入所後の具体的な支援策がないまま入所させることはできない。
・ ルールがほしい。受入れた施設だけがリスクを負っている。

これらの理由からどうしても身元保証人を求めざるを得ない状況が続いています。

身寄りのない人は今後増えていく!?

厚生労働省の「2019年 国民生活基礎調査」によると

65歳以上の単独世帯の高齢者は約737万人(高齢者全体の19.6%)で増加しています。

病院や福祉施設は身元保証人に「緊急の連絡先」「費用の未収金」等の役割を求めていますので今後も入院・入所の際に身元保証人がいない!という高齢者は増えていくと思われます。

まとめ

急な病気をしたとき、これまで連れ添ったパートナーが亡くなり一人になったなど

理由は様々ですが病院への入院や福祉施設への入所を突然考えないといけないことがあります。

特に入院や入所を断っている病院、福祉施設ではそのような緊急の場合に受け入れる負担や責任が重いため断っていることがわかりました。

単身の高齢者様やお子様がいない、またはお子様に迷惑をかけたくないというご高齢のご夫婦も

「まだ大丈夫!」と思わず、終活の一環として「自分の保証人になってくれる人は誰か?」を考えてみてもいいと思います。

当事務所でも身元保証人についてのご相談は随時受け付けております。ご不安な方はお気軽に行政書士寺田裕希事務所までお問い合わせください。